「“推し”への気持ちに寄り添えるのか」 迷いから始まるWEBデザイン
2020年09月16日
オンラインで世界で一つの花を注文できるサービス「Sakaseru」。舞台やライブ等、公演祝いの花を中心にご注文を頂いています。お客様のほとんどは、公演に出演する演者の方々を応援する、「ファン」の皆様。
そして2020年8月3日、新サービス「ミンサカ」がリリースされました。これは「ファンから”推し”へお祝い花を贈るため」の、企画・集金クラウドファンディングサービスです。公演祝い花としてポピュラーな、しかしとても手間のかかる「ファンコミュニティで企画・集金をして一つの花を贈ること」を、簡単にできるようにしたのです。
今回は「ミンサカ」にまつわる二つ目のストーリー。
「ミンサカ」のデザインすべてを担った、株式会社SakaseruのWEBデザイナー・小柴にその想いを尋ねました。
前回の代表兼エンジニア・小尾のストーリーとはまた違った視点で、語ってもらいます。
「楽しい」&「シンプル」のデザインテーマ
「ミンサカ」の設計からロゴまで、小柴さんはデザインをすべて担当しました。デザインテーマはありますか?
小柴:
ビジュアルデザインと、UXデザイン(お客様の体験デザイン)・UIデザイン(画面操作性のデザイン)とで、それぞれテーマがあります。
ビジュアルについては「楽しい!」を一番のメインテーマにしているので、全体的にワクワクするようなポップな雰囲気にしました。
小柴:
でも、実はこういうタイプのデザインが得意ではなくて。他Webサービスをたくさん見ては頭を悩ませました(笑)
なぜ「楽しい」をテーマにしたのでしょうか。
小柴:
デザインテーマを決める前、特に企画主催側の気持ちを調査し考えたのですが、主催者さんは、「企画に参加してくれる方に、楽しんで欲しい」と思っているように感じました。
「ミンサカ」は、ファンの皆さんがこれまでのように大変な思いをすることなく、便利にお花を贈れるサービスです。そんなサービスを通じて、「Sakaseruも主催者さんと参加者さんを楽しませたい」と思ったんです。
UX・UIのテーマはどうでしょうか。
小柴:
UX・UIは「シンプル」がテーマです。
考えて設計はしましたが、ミンサカはこれまでにないサービスですから、お客様のUXを正しく把握できているかわかりません。本当の正解はお客様に見てもらわなければわからないので、複雑な動きや機能を増やすことは避け、作り込まないようにしました。
本当は色々機能を付けて、新しい体験、なんかを提供できたら良いのですが。それは後にして、まずは「今まで大変だったことを便利にする」ツールとして提供していきたいと思いました。
サイトの構造もシンプルです。これも修正が必要になった時、迅速に対応できるように、という意図でそうしています。
デザインする上で、「特に主催者側の気持ちを考えた」ということですが、小柴さんは、これまで「誰かを強く応援した経験」はありますか?
小柴:
実は、ありません。
好きな俳優さんはいるのですが、お花を贈るほど熱意を持って応援したことはなかったんです。
ですから、「ミンサカ」について代表の小尾から聞いたときは、「お客様の体験をリアルにイメージした、お客様の気持ちに寄り添ったものづくりができるのか」という迷いや、ちょっとした不安がありましたね。
どのようにその不安を解消していったのですか?
小柴:
まずはどのようなツールを使って、どういう流れで動いていくのか、など、現在のお花企画の流れを徹底的に調べ、イメージしました。それから、既存サービスの「Sakaseru」でお客様と交流させて頂き、お客様がどれだけ気持ちを込めて贈っているのか、お花がどれだけ大切なものなのか、といった気持ちを学びました。
あとは2年ほど前にお客様対応担当であるスタッフアスカが行った、オンライン調査の結果と、企画主催経験者へのインタビューも読み込みました。インタビューの内容は公開されていませんが、どなたも多くの参加者を集める“主催者としてトップレベル”の方々ばかりで、とても勉強になりました。
既存のSakaseruでの経験やその調査を通じて、どのような発見がありましたか?
小柴:
お花企画を主催する方々は、推しに喜んでもらいたいという想いと同じくらい"企画参加者の気持ち”をすごく大切にしていることがわかりました。
主催をするのは、ファンの中でも特に想いの強い方々です。だからこそ、誰よりもファンの気持ちに配慮できるのだろうと思いました。その細やかな気遣いは「人の気持ちを大切にするスペシャリストだな」なんて感じます。
私は「ミンサカ」を開発するメンバーとしてSakaseruに入社したのですが、今思うと、既存の「Sakaseru」にだけ携わる時間があってよかったです。入社していきなり「さあ作ろう」だったら、今とは全然違ったものになっていたと思います。
ミンサカの開発に対し、不安以外にどのような気持ちがありましたか?
小柴:
単純にわくわくする気持ちもありました。課題が明確なので、サービスリリースがお客様のプラスになることだけはわかっていましたから。
また、「『完全に新しいWEBサービス』を作ることができるんだ」と、嬉しくもなりました。
私はWEBサービスが好きなので、よく「こういうのがあったらいいな」と考えるのですが、そう思うものは大抵、もうあるんですよね。でも、ミンサカは求める人が明確にいるのに、世の中にモノがない。すごくワクワクしました。
実際の開発は代表兼エンジニアの小尾と共に、たった二人で行いました。開発期間は半年程度。
大変ではありませんでしたか?
小柴:
特に大変だとは感じませんでした。確かに、沢山作業者のいる環境ならもっと落ち着いて作業できたかもしれませんが、ミンサカへ込められる、私の想いは小さかったはずです。二人だからこそ、思い入れがとても強くなりました。
まあ、その分、同じく想いの強い小尾とぶつかることもあって、それが大変といえば大変だったかもしれません。笑
それぞれのやりたいことがあり、やりたい気持ちもそれぞれ大きい。しかもどちらも間違っているわけではなく、正解はお客様以外誰も知らない。だから意見をぶつけ合いました。
最終的にはどちらも正しい意見がぶつかった場合、デザイン面は私に任せてもらう、という形で開発を進めていくようにしました。
あの頃はバチバチでしたね。
小柴:
でしたね!(笑)
コロナがもたらす新たな不安
お客様と伴走する未来
開発開始早々に新型コロナが広まり、先行きが見えなくなりました。その時の気持ちを教えて下さい。
小柴:
4月くらいまでは、正直こんなに大事になるとは思っていませんでした。でも本格的な自粛が始まって、5月頭に「2年続く恐れがある」という話を聞いて、正直「ヤバいな」と思いました。
なので「お花に限らない方がいいのではないか」「リリース時期を遅れさせた方がいいのではないか」などの提案をしました。でも何度も話し合いをした結果、未来をどれだけ不安視していても仕方がないということになって。
まずは当初考えていた形で、予定通りの時期にリリースすることを決めました。
実際にリリースしてみた感触はどうでしょうか。
小柴:
私が不安視していたよりは、使ってくれる人が沢山いました。本当にありがたいです。
使ってくれる上に、意見や感想を下さる方もいて、自分たちだけでは想定できなかった部分が、沢山見えてきました。
作り始める頃から考えていた「お客様に見てもらわなければわからない」という感覚は、本当にその通りでした。
お客様に見て頂くための努力として、Twitter上でリプライやDMを送る営業活動も行っています。
沢山想いを込めて作ったものですから、せっかくだったら沢山の人に使って頂き、便利でないところがあるなら便利にしていきたいと思っています。
リリースから1ヶ月ほど。既に多くの追加機能が実装されていますね。
小柴:
リリースとは言っても、私としては「完成」とはまったく思ってはいませんでしたから。はじめから、ずっと開発を続けていこう、という気持ちでした。
だから「ミンサカ」のメインメニューには「機能改善の依頼」という機能面への改善要望フォームがあります。
できればどんどん皆さんの声を聞かせて欲しいです。
これからミンサカがどのようなプロダクトになったら良いと思いますか?
小柴:
機能面に関して言えば、お客様の意見をどんどん反映させていけるようになるといいなと思っています。私たちだけではなくて、お客様と一緒に創り上げ、進化させていく。そんなプロダクトが理想です。
また、今よりもっと“想いを届けられる”サービスになったらいいなと思っています。
応援の想いっていうのは本当に人それぞれで、「お花よりグッズ買った方がいいんじゃないか」みたいな方もいると思います。お花以外のものも贈れるようにしたりして、そういう方の気持ちもカバーできるようなサービスにできたらいいなと。
広い意味で、多くの人の気持ちを伝えられるようなサービスにできたら、と思います。
ただそれも、お客様のご意見を見ながら、これからずっと考えていきます。
SNSでシェア