おしゃれな喫茶店の似合う、清楚な雰囲気。私たち取材スタッフがお会いした石森亜希さんは、まさにそんな言葉の似合う、穏やかなオーラを纏った方でした。
大人びて見える彼女は、なんと現役バリバリの大学3年生。しかし学業と並行して、一人の役者として1年以上ご活動されています。そのご活躍ぶりは、定期的にお花を贈ってくださるファンの方もいらっしゃるほど。
更に、まだ人生の選択肢が多分に残された今の時点で、既に「お芝居の世界で生きていく」ことを決めていると言うのです。
現在、9月。大学3年生の今頃といえば、石森さんの周囲は、就活モードの方も多いのではないでしょうか。その環境で何故、その選択肢を取ろうと思うのか。石森さんにそうさせる役者という仕事は一体何なのか。
過去から現在のご活躍、そして未来に向け、展望を伺いました。
*
石森さんが舞台芸術に触れたのは、お母様がきっかけでした。
「私の母がミュージカル好きで、昔からよく連れて行って貰っていました。
中学の時には宝塚にもハマりまして。しばらく追っかけをしていました 笑」
お母様と共に"観る側"としての経験を積みながら、漠然と『私も舞台に立ってみたい』、という気持ちがずっとあったという石森さん。その情熱は宝塚音楽学校への受験を志すほどでした。しかしながら、親御様の反対で、受験はやめてしまったそう。
とはいえその時の親御様の判断は、今思うと正しかった、と石森さんは振り返ります。
「受かるとも思えなかったですし、当時は覚悟もなかったので、もし受かったとしてもやっていけたとは思えません。なのでそこに後悔はないんです」
そんなバックグラウンドを経て、石森さんは2015年に第一の分岐点を迎えます。
それは数々受賞歴もある劇作家、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの主宰する劇団『ナイロン100℃』の舞台でした。
その「消失」という舞台は、石森さんにとって、歌や踊りのない、初めての舞台体験でした。
慣れ親しんだミュージカルとは全く違う物語の進行、そしてリアル感――石森さんはとてつもなく圧倒されます。
「物語としてはSFなのに、ものすごくリアルで、キャラが生きていて……。
それを見て、『私、お芝居がやってみたい!』と思いました」
宝塚受験断念の頃からきっとくすぶり続けていた、「舞台に出たい」という思い。素晴らしい舞台に触れたことで、それに火が点いたのでした。
現在も大学に通う石森さんですが、初めての演劇体験は大学のサークルでした。
「舞台に立てる最後のチャンスだと思って、サークルに飛び込みました」
思い切って足を踏み入れたお芝居の世界。
そこでは同期、先輩との充実した日々が待っていました。
「実際にお芝居をやってみて、すごく楽しかった反面、思っていた以上に難しいな、と感じました。
難しくそして面白いのは、役者は自分の役だけでなく、相手役、あるいは劇にかかわるすべての人のことを考える必要があるということ。
役作りから、セリフの言い方から、一人が変われば他の人も反応します。『自分だけ目立てればいい』なんていうのは、ありえない世界でした。
お芝居を始めて、『相手のことを考える』という癖がついたように思います」
そうして人間的な成長も感じる中、お芝居に見事ににハマった、と言う石森さんは、「何故こんなに楽しいのかわからないくらい楽しい」というほどに幸せな毎日を送ります。
そして先輩の助言でサークルのみならず、外部のオーディションにも参加することに。なんとそのまま、初めてのオーディションで合格します。
当時を振り返り、「何が良かったんでしょうね」と照れ笑いをする石森さん。
その時が「お金を貰って舞台に立つ」、初めての経験となりました。
「サークルでの演劇と、お金を頂いてやる演劇はやっぱり少し違いました。
その二つを経験したことで、より役者として突き詰められる環境、仕事として演劇を行う環境に身を置きたい、と強く思うようになりました」
そんな石森さんのSNS(@kachapi0404)には『自称役者』と書かれています。
ストイックな雰囲気ながら、“自称”と付くのは何故なのでしょう。また、それが取れるのはいつなのでしょうか。それには、「お芝居で生活できるようになったら、かなと思っています」というお言葉が。
「まだ大学生なので、これから学校を卒業する必要もあります。もちろん、舞台に立っている時は一人の役者ではありますが、役者として自立できるまでは、まだ自称、と付いてしまうかなと思っています」
ではまず役者として目指すところは、と伺うと、「自分の強みを作ること」。
「”この分野なら負けない”というものを作りたいです」
そのために、沢山の演出家さんのもとで経験を積みたい。今とはぜんぜん違う、色んな役をやってみたい――そんな風に語る石森さんの瞳には、”自称”とは思えない、お芝居に対する情熱が燃え上がっていました。
石森さんの言葉でお伝えさせて頂きます。
「応援してくださる方には感謝しきれないほどの感謝があります。
自分がどんなにお芝居を追求したとしても、素晴らしいものを作り上げたとしても、見に来てくれるお客様がいなければ、お芝居は完成しません。
チケットを買って、見に来てくれる方がいるから、役者という仕事は成り立つしお芝居は存在できる……だからこそ、感謝をきちんと返せるように努力していきたいと思っています。
尊敬する先輩から『一人でもあなたのこと見たい、と言ってくれる人がいる限り、続けなきゃだめだよ』と言って頂いたこともあります。
応援してくださる方を裏切らないように、覚悟をもって、真摯にお芝居に向き合って、ちゃんと続けていきたいと思っています。
ましてお花を贈ってくださるなんて、本当に嬉しくて。お花めちゃくちゃ写真撮ります。
他のプレゼントと違った特別感があって、もらうと『こんなに応援してくださる方がいるんだな』『もっと頑張らなきゃ』、という気持ちになって心強いです。
見に来てくださる方、お花まで贈ってくださる方、本当にありがとうございます」
石森さんが演劇に足を踏み入れるまでにも、つかず離れず、彼女の人生に寄り添い続けた「舞台」の世界。取材スタッフは、そこに運命的なものを感じずにはいられませんでした。
またその場所に”呼ばれ”続け、ついに足を踏み入れた石森さんは、本当に生き生きとしています。お芝居に触れているのが幸せなんです――そう言える物事に出会える人は、世の中にどれくらいいるでしょうか。
取材の中で「うまくいかなくて辞めたい、と思うことは何度もあります」ともお話して下さった石森さん。でもきっとこの先も、彼女は役者という仕事を愛して、愛されて、生きていくのではないか、と感じさせました。
無限に広がる選択肢の中で、役者としての道を真っ直ぐ選び取ろうとする石森さんは、私たち社会人にとって、とても眩しく映ります。
石森さん、この度はお忙しい中インタビューにお答え頂き、本当にありがとうございました。
この場を借りて、改めてお礼申し上げます。また今後のご活躍を心よりお祈り致しております。
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【今回インタビューさせて頂いた方:石森亜希さん】
次回出演予定は9/20-9/25に新宿眼科画廊スペースOにて行われる、劇団おおたけ産業「かくりよ」。
チケット等詳細はこちらからご覧下さい。
https://stage.corich.jp/stage/102153
※こちらの公演は終了致しました。
【取材・執筆】Sakaseruアスカ
【撮影】Sakaseru小柴
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