初夏の似合う爽やかな風貌と、気さくな雰囲気。マスク姿で現れたその男性は、俳優の岩佐 祐樹(@yu_kiwasa0419)さん。ストレートの舞台(※)から2.5次元のミュージカルまでこなす役者さんです。
お花を受け取る機会も多い岩佐さんに、この度Sakaseruからインタビューを申し込むと、快く了承頂きました。
何より応援してくださるファンの皆さまを大切にする、岩佐さん。
新型コロナウイルスの影響も多大に受け、応援して下さる皆さまに姿を見せる機会も失っています。その時どのようなお気持ちだったのか、そんな内容も含め、素朴で飾らない雰囲気そのままに、役者業の始まりからお話を伺いました。
*
岩佐さんのキャリアは、大学1年生の時に応募した、養成所のオーディションから始まります。
「もともと、人を笑わせたり、楽しませたりすることに興味があったんです。
高校の時所属していたサッカー部が、面白い人ばっかりで。学生ノリの一発芸大会! なんてやっていたら、そう思うようになりました。
時間がある大学生の身分でしたから、軽いノリで『やってみようかな』と」
親御さんに内緒で自らオーディションに応募した岩佐さんは、見事、養成所所属に向けコマを進めます。しかしながら、未成年は保護者の同意が必要でした。
「養成所の人から、『ここから先に進むには親御さんの許可が必要だよ』と言われてしまって。それはそうですよね。笑」
事情を話して相談すると、何事も背中を押してくれるというご両親は、すんなりと許可をしてくれました。そこから、千葉のご実家・東京の養成所・埼玉の大学、3都県を行き来する日々が始まります。
ただそのような経緯だったため、実は芸能活動を長く続けるかどうか、岩佐さんは大学4年になるまで決めていませんでした。
「でもだんだん芸能の現場の方が楽しくなっていったんです。そして決定的だったのは、教育実習ですね」
教員資格を得るために必要な、数週間の実習期間。実は大学入学時点では、教員になることを目標としていました。
しかし実習の場で、岩佐さんは「自分は教師に向いていない」と感じたのだそうです。
その時のことを、笑いながらも少し言いづらそうに語って下さいました。
「これ、本当に苦い記憶なんですが……。はじめは、生徒もすごく好意的だったんですよ。でも授業が始まってからは全然ダメでした。生徒に本当に好かれなくて。
その時、先生って子どもが好きなだけじゃダメなんだと、勉強も好きじゃなきゃ人に教えられない、先生になれないんだと、わかったんです」
同じ学校で教育実習をしていた別の実習生が、最終日に手紙やプレゼントをもらう中、岩佐さんは空手で帰路へ――少々悲しい思い出ではありましたが、お陰で芸能の道に進む心が決まりました。
完全に気持ちを切り替えた岩佐さんは、一般企業の就職活動も行いませんでした。
「親も『やりたいことをやってみなさい』と言ってくれたので、迷いもなかったです」
そうして本格的に芸能活動を始めた岩佐さんでしたが、当初は役者さんではなく、“タレント”さんを目指していたのだそうです。プライベートでも場を回すMCのような役割を担うことが多く、そのような方向に進めれば……そう考えていました。
しかし、自分はタレントとして活かせることを持っていない、と感じた岩佐さんは、生来のお顔立ちやスタイルの良さを活かせる、役者業をメインに芸を広げていくことに。
最初はお芝居がわからず、苦しい日々が続いたそう。でも、わからないなりに必死にやっていくうちに、岩佐さんはだんだんとお芝居が楽しく、好きになっていきます。
「ある主演舞台から、お芝居への気持ちが大きく変わりました。
共演した先輩役者さんに『人のために芝居をしなきゃいけないよ』と教えて頂いたことがきっかけです」
その言葉で、岩佐さんは自分一人の芝居しか考えられていなかったこと、ご自身の中にお芝居に対する思い込みがあったことに気づきました。
「お芝居って自分の台詞を言うとか、キャラクターを作るとか、自分ひとりのものだと思ってしまっていたんです。でも本当は人とやり取りをしたり、周りから何かを感じて表現するもので。
それに気づいてから僕の中で演じるということが変わりました」
現在では、岩佐さんは幅広い舞台に出演しています。
2019年に出演した『ALIVESTAGE』というステージをきっかけに、数多くの2.5次元舞台からも声がかかるように。
2.5次元の舞台とそれ以外とでは、演じる気持ちに違いはあるのでしょうか。
「どちらも好きですが、違いは大きいので、お芝居はお芝居でも同じくくりでは捉えられないと思っています。
お芝居に対する向き合い方は変わりませんが、演じ方も違います。演目によっても変わりますが、『ALIVESTAGE』は作品の世界観の中に“演劇のエッセンスが入っている”というイメージでした。
それぞれ難しさはありますが、どちらも勉強になりますし、楽しいですよ」
岩佐さんははにかむように笑って、続けます。
「お芝居に限らず何ごとも人に教えて頂いたり、やりながら失敗して覚えていくことが多いんですよね。周りの人に育てて頂いているなと思います」
お芝居のことが何もわからなかった頃。そこから助言を受け止め、気づきを経て、現在の岩佐さんはお芝居に目標を持って活動しています。
「いずれお芝居の“実力”で人をひきつけられるようにしたいです。
今はありがたいことに役柄を通しての僕、そして岩佐祐樹という人間を応援して頂いてますが、いつまでもそれではいけないと思っていて。
役者としての実力をつけて、ゆくゆくは大きなストレートの舞台に立てるようになりたいです。役者として、いい年のとり方をしたいですね」
岩佐さんの一番のご活躍の場である、舞台演劇。
それが今年2020年のはじめから、新型コロナウイルスの影響で全国的に取りやめになっています。
岩佐さんが出演予定だった舞台も、直前で延期に。その時は、今まで感じたことのない心境だったそうです。
「残念だという気持ちと、少しほっとしたような気持ちと両方がありました」
ぎりぎりまで続けていた舞台稽古。その完成度を上げながら、岩佐さんの中で『皆に見せたい』という気持ちが膨らんでいきます。そしてまた一方で、同じくらい不安も大きくなっていったそう。日々重症の方や亡くなられた方のニュースを耳にし『100%お客さんのためになるのだろうか』という不安がよぎっていました。
「だから延期が決まった時には悔しく残念な気持ちではありましたが、肩の荷が降りたようにも感じて、とても複雑な気持ちでした」
これまで誰も経験したことのない、未曾有の事態。
しかしそこから立ち直り始める機会も、岩佐さんは既に手に入れています。2020年6月現在、7月、8月と続けて2作品の舞台出演が決まっているのです。
まだどのようになるのかは誰にもわかりませんが、岩佐さんは不安に思わないようにしていると言います。
「しっかり対策をして、見る側も作る側も安心できるような舞台にしたいと思っています。お互い、舞台の2時間だけは不安ゼロで、安心して見ていられるような。
ウイルス対策というやるべきことは増えますが、いつもの舞台と一緒だと思っています。きちんと稽古をして、本番をキメテいく。心配はありますが、楽しんでもらうことだけ考えていきます」
岩佐さんがお仕事をする上で“大切にしていること”、をお伺いしました。
「何よりも応援してくれる人に『楽しんでもらうこと』、『喜んでもらうこと』を大切にしています」
この言葉は、考える間もなく岩佐さんの口から出てきました。それだけでも応援してくれる方々へのお気持ちが伝わってくるようですが、岩佐さんは更に続けます。
「すごくありがたいことに、最近応援して下さる方が増えているんです。そして増えてきたからこそ、一人一人を大切にしていきたいとすごく思っています」
SNSや配信、ファンクラブサイトなど、ファンの方と交流できる場所はいくつかあります。そういった場で、岩佐さんはファンの方々とご自身とで、“輪”を作りたいと考えています。
「僕を中心にした輪ではなくて、僕も輪の一員になっているような。一緒に横を歩く、一緒に楽しむ、そういう関係性でありたいと思っています。
実際、今も配信の時なんかは、僕がメインで話すというより“みんなで雑談する”という感じ。もともとMC役をするのが好きなので、リスナーさんたちの会話を僕が回していたりします。僕のほうが楽しませてもらっていたり。笑」
「小劇場でやっていた頃は、舞台が終わったら受付に出ていって、見て下さった方にご挨拶していました。そこから僕はスタートしているので、いつまででもできる限り近い距離で、見てくれる人を一人一人大切にしていきたいです」
では改めて、応援してくれる方々は岩佐さんにとってどんな存在でしょうか。
「とても大切で、なくてはならない存在です。
言ってしまえば赤の他人で、繋がりはすごく細いのに、『糧になってます』とか『この公演があるから頑張ってこれました』なんて言ってくれたりして、お花を贈ってくれる人もいて……。そういうことで本当に、頑張ろうと思えるんです。
普通に生きていたら何の接点もない他人だからこそ、お互い影響を与えられるのがとても嬉しいですね」
そんなファンの皆さまへ、岩佐さんからメッセージをお預かりしました。岩佐さんの言葉そのままをお伝えします。
「いつも応援ありがとうございます。
皆と交流する時間は仕事という意識はあまりなくて、純粋に楽しく過ごしています。本当、楽しませて頂いてます。支えてもらっています。
皆さんがいて僕がいるので、頂いたご縁をこれからも大切にして、ずっと繋がっていける、繋いでいける、そんな関係になれたらなと思っています。
お互い楽しい時間を過ごせる人として、お互いが豊かになれたらいいなと思います」
前書きからの繰り返しになりますが、飾らない雰囲気、自然体の魅力が素敵な方でした。
もちろんお顔立ちはとても格好良い方ですが、対面するとその優しげな雰囲気に、良い意味で力が抜けます。インタビュー中もご自身を「普通」だと何度もおっしゃっていて、決してそうではないのに、“身近なお兄さん”を見ているような気持ちにも。
そのお人柄の源点は、ご家庭の環境からなのかな、とSakaseruスタッフは感じました。インタビューの本文では泣く泣くカットしましたが、「普通だけど、優しさの塊」だというご両親に関する温かいお話もありました。
「芸能活動以外のことでも、僕がやりたいと言ったことに、親からやめなさいと言われたことは一度もありません。今考えると本当に感謝です」
この一言だけでも、岩佐さんと、ご両親のお人柄が感じられるようです。
そんな岩佐さんと肩を並べ、“輪”を作るファンの皆さま。きっとそこは本当に温かい空気が満ちているのだろうな、と感じました。
このインタビューを読んだ人に、岩佐さんのお人柄や、その温かい空気が少しでも伝われば良いなと思っています。
岩佐さん、この度はインタビューにお答え頂き本当にありがとうございました。
Sakaseru一同、今後のご活躍を応援しております!
【今回インタビューさせて頂いた方:岩佐祐樹さん】
次回出演予定は、
「殺し屋にくびったけ」
7/8~12@シアターサンモール
「青春歌闘劇バトリズムステージVOID」
8/12~16@あうるすぽっと
【取材・執筆】Sakaseruアスカ
【撮影】Sakaseru小柴
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