腰の低い、でも明るく楽しげな雰囲気の、キュートな男性。
俳優・田代竜之介さんの第一印象は、そんな方でした。田代さんは現在、舞台のお仕事を中心に、役者としてお仕事をされています。
インタビューアのスタッフを気遣い、場を和ませようとお話してくれるそのご様子。すぐにスタッフは、田代さんに安心してお話させて頂けるようになりました。
そんな暖かな雰囲気を持つ田代さんですが、インタビューを始めると、その明るい雰囲気のまま、情熱的にお仕事やお芝居についてお話をしてくれました。現在、自分の意志で積極的に役者さんとしてのお仕事をメインにしているという田代さん。
決して役者業に固執するのでもなく、様々な視点を秘めながら、それでもやはりお芝居が好き、というそこには、どんな想いがあるのか。
また、このように暖かな方にとって、ファンの方というのはどんな存在なのか。
田代さんのお言葉で、お話をして頂きました。
現在舞台に立つ役者業をメインとしてご活動される田代さん。しかし、田代さんが芸能界に興味を持ったのは、お芝居がきっかけではありませんでした。
「僕、あるバラエティ番組が大好きで。そのレギュラーメンバーの、“ファミリー”になりたいと思ったのが養成所に入ったきっかけだったんです。
実は、その頃役者さんはファミリーに多くなかったので、『役者枠だったら入れるんじゃ!?』と思って、役者を目指したんです」
少し、照れくさそうな表情です。
しかし田代さんが養成所に合格した後、早々にその番組は終わってしまいます。その出来事も重なり養成所の二年の間は、どちらかというと“なんとなく” 通っていたそう。
それが変わったのは、二年目に、ある舞台の『アンサンブル』と呼ばれる小さな役をもらってからでした。
「そこで、舞台の、お芝居の面白さを知りました」
お芝居の面白さ――役者の方から必ずと言ってもいいほどお伺いする言葉ですが、その意味するところは少しずつ違っています。田代さんにとって、それは一体何なのでしょうか。尋ねると、田代さんの表情が一層輝きました。
「まず、稽古そのものが面白いですよね。厳しいこともありますが、皆で一つのものを作り上げていくのってすごいことだし、楽しい。
それに、やっぱり自分ではない人生を歩めるというのが好きです。
例えば先日、28歳の役を演じたのですが、その役には28年の人生があるんです。それを考えるのも楽しいし、でもその空白を埋めるのには稽古の1ヶ月間しかありません。それに、別の役柄との間に友人関係が5年間あったとしたら、その5年も埋めなければなりません。
そういう役作りが大変で楽しいですね」
田代さんはそれでも、と言葉を続けます。
「まだ僕はお芝居の面白さに “潜っている” 最中だと思います。これは多分ゴールがなくて、潜り続けるものなんじゃないでしょうか」
役作りについてお話が移ると、田代さんは「よく役者仲間からお前のやり方めんどくさいよ、なんて言われるんです」と笑うのでした。
「その役柄のバックボーン、……どこで生まれて、どういう両親に育てられて、兄弟はいるのか、学校ではどういう存在だったのか、というようなことを考えるのを基本として、僕は未来まで考えるんです。物語の前も後も考えて、一つの人生を作っていきます」
考えるだけで大変そうですが、田代さんは役作りの際には必ず行うのだそう。またそうした上で、細かい仕草や動作などを詰めていくのだと言います。
大変ではないのでしょうか、と伺うと「大変ですよ」と明るい声が返ってきました。
「でも役が自分の中でぴたっとハマる瞬間があって。それがすごく気持ちいいんです。
しかも面白いことに、自分でこれだ! と思った瞬間に、演出家の方からもOKが出たりして」
大変なことと嬉しいこと、どちらも田代さんは楽しんでいらっしゃるように思われました。
また役作りのお話の場面では、劇場に足を運んでくれたお客様との交流についても。
「役柄の未来まで考える、それをやっておくと、お客さまとお話する時も楽しいんですよ。
お話させて頂いた方が、『私はこの後こうなったと思います』って聞かせてくれることもあって、ああ、そういう風に捉えたんだ、なんて感じます」
心から楽しそうに、お芝居の魅力について語って下さる田代さん。
しかしやはり、いわゆる “普通” の職業ではないことは苦悩もつきものなのだそう。
「悩んでしまう時には、役者辞めたい、まで行くこともあります。
まず一番落ち込んだタイミングは、周りが就職していく時です。僕は高校を卒業してそのまま役者をやっているので、それで正直、焦りました。『このままでいいのかな』と。
更に最近は、家庭を持った、子供が何歳、という話を聞くようになって、やっぱり少しネガティブになってしまうこともあります。
でもそういう時は、これまでの8年の活動の中で頂いたお花の写真やお手紙、差し入れを見るんです。“もう、僕一人の夢じゃないんだな” 、“僕がやめたら悲しむ人がいるんだ” 、そう考えると、ネガティブになっている場合じゃないなと 笑
ファンの方には本当に頭があがりません」
今後、実は田代さんは「マルチな役者」を目指したいと言います。
「バラエティ番組も出てみたいですし、声のお仕事だったり、モデルの仕事だったり、とにかく幅広く色んなことに挑戦したい、と思ってます。
まずは “田代竜之介” 知ってもらわないと始まらないですから。自分をいかに知ってもらうかを考えています」
今は芸人さんなど、本業役者さん以外もお芝居をします。それと同じように、役者さんがお芝居だけでは、と考えているのだそうです。
その優しげな瞳には、未知の挑戦への情熱が燃えていました。
田代さんを支えるファンの方へ、感謝の言葉をお預かりしています。
「簡単な言葉になってしまいますが、まずはありがとうございます、という気持ちです。
芸能界には “役者” をやっている人が死ぬほどいます。その中で自分に出会ってくれて、まして応援してくれて……ありがとうでは済まないです。
舞台も映画を見るより高いのに、更にお花買ってくれたり、物販を買ってくれたり、……ありがとうの最上級がないかな、と思います。笑
その上で伝えたいのが、僕も今の僕に満足してないので、ファンの方にも満足していてほしくない、ということなんです。
僕がより高み、より多くの方に見てもらえるステージに行って、ファンの方と僕と一緒に歩んで行って、一緒にその景色を見ていきたい。一緒に歩んで行って欲しい。そう思っています。
本当に、応援してくれて、ありがとうございます。感謝の言葉しか出てきません」
今回の本文には加えませんでしたが、もう一つ、田代さんのお話の中で印象に残っていたのは、「人は一人では生きていけない」というお話でした。
一人の人間として、役者として、一番大事にしているのはコミュニケーションだという田代さん。お会いした当初から感じていた気を遣って下さるご様子や、腰の低い雰囲気に、すごく合点がいったのを覚えています。
その優しさ、周りの人思いの姿勢は、お花にも。「お花も生き物ですから、贈ってくれたお花には、毎回声をかけて楽屋に入るようにしています」その様子が目に浮かぶようで、とても暖かな気持ちになりました。
役者さんとして苦悩し、懸命に上を目指しながら、周りを見ることを忘れない田代さんは、とても魅力的な方でした。お話していくうちに、田代さんを「応援したい」「頑張って欲しい、もっと売れて欲しい」という気持ちが段々わいてくるのです。
きっと私の何倍もそう思っていらっしゃるファンの方のためにも、このインタビューが田代さんの魅力をお伝えするのに、少しでも役立てれば、と感じる時間でした。
田代さん、この度はお時間頂きまして、本当にありがとうございました。
是非、今後のご活躍、Sakaseruからも応援させて下さいませ…!
* * *
【今回インタビューさせて頂いた方:田代竜之介さん(@ryunTT08)】
次回出演予定は2020年2月7日(金) ~ 16日(日)、板橋区のバルスタジオにて、K-FARCE×ecrin『櫻之散響~はなのちるおと~』
チケット等詳細はこちらからご覧下さい。
https://kfarce2014.wixsite.com/kfarce/blank-21
【取材・執筆・撮影】Sakaseruアスカ
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